メルヘンの泉Blog

~近況報告やお返事、ぼやきなどを書きます~

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

濡蓮(寝蓮)制作委員会~最後の一日(4)

濡蓮(寝蓮)制作委員会。続きからどうぞ。

最後の一日(4) ~悩蓮のち晴蓮 (←濡&寝蓮After)




昨夜の嵐は嘘のように過ぎ去り、春の日差しがとても眩しい。
これでヒール兄妹しての最後の食事。
そう思うと寝不足は忘れ、気合いを入れてカイン兄さんの為の朝食を作りテーブルに並べ、いつものようにカイン兄さんを起こしに行く。

寝室に入ると、もう起きて支度していた敦賀さんが居て私が迎えに入るのを待っていた様子だ。

「最上さん、おはよう。あれから眠れた?」

その言葉に思わず未明の出来事を思い出してドキッとしたが、ええ、少し眠れました、と仲居の営業スマイルを武器に切り抜け、何事も無かったかのように敦賀さんを朝食のテーブルに招いた。

ああ、敦賀さんったら、何て笑みを浮かべるのよ!?全てが浄化されてしまうような光輝く笑顔で言わないで下さい!
・・・と心の中で悲鳴あげつつ、悟られてはいけない、と極めて冷静に対応した。


ショックだな・・・あのディープキス、何とも思われなかったのか・・・
どうやら寝ぼけてやったことだと思っているようだが、いや、そう思ってもらわないとマズイと思うから仕方ないのだけど。だから意識してもらえないままか?
少なくとも不破と同じくらいの時間はキスしていたはずなんだけど。いや、だから今回も「役者の法則」で終わってしまったのか?うーん、俺としては今後の関係を考えるとこれが最善の方法だと思ったのだが・・・


「敦賀さんは眠れましたか?ホテルに帰るまでは殆ど寝ていなかったのでしょう?僅かな時間で足りましたか?なんだか寝言で魘されていた気がするので。」

あの時本当に眠っていた、という確証が欲しくて突っ込んで聞いてみた。だってあまりにも濃厚なキスで、寝ぼけて妹にキスしたにしても激しくて。もし眠っているフリだったら何で?なんてとても怖かったし理由を考えたくも無かったから。

「・・・ひょっとして、いびきを掻いてうるさかった?」

「いえ、滅相もございません!『雪花』と呼ばれた気がしたのですけど、きっと気のせいですよね?私も直ぐに眠ってしまったので、もしかしたら私の夢の中の出来事だったのかもしれません。」

「そう・・・そういえば俺も夢の中でセツと一緒に歩いている夢を見ていたな。一人っ子だったからずっと妹が欲しいと思っていたし、社長命令で始めた時にはどうなるかと心配したけど2ヶ月間の兄妹ごっこはとても楽しかった。それに演技にもすごい役立ったよ。最上さん、貴重な時間を本当にありがとう。」

すごい優しい笑顔で見つめられ、赤面して俯いてしまった。でもそんな自分が敦賀さんに見られていることについては全く考えが及ばず、ひたすら自分の思いだけが脳内を巡っていた―――――敦賀さんは妹が欲しかったのか、そうかそうか。それであんな激しいキスだったのね。雪花も兄さん一途だったから、雪花のファーストキスは兄さんだったのかもしれない。そうか、本当のファーストキスって・・・こんなに甘くて熱いものだったのね・・・一瞬でもショータローとのアレをファーストキスだなんて思ってしまった私って馬鹿よね。ああ、素敵な感触・・・。思わず、キスされた唇に手を持っていって指で自分の唇を再確認してしまった。カイン兄さんはキスするくらい妹を心から大事にしていたのだ。私の中の雪花も、兄さんという存在がとても大事だったから、演技を終えるにあたり寂しい気持ちが芽生えたんだ、と自分のもやもやとした気持ちをそう置換したのだった。一瞬、敦賀さんの瞳が妖しく揺れた気がしたが、自分の気持ちの整理で一杯だった私はそのことを気にせず流してしまった。

「私も、、、『兄さん』という存在には憧れていたので一緒に居られて幸せでしたよ?」

かつて先生の息子役を演じたとき、敦賀さんが「役を掴んでいたよな」と言ったのを先生に伝えたら、先生はとてもビックリして、安心していたっけ。それを思い出して、きっと第三者とかの感想を言うことや伝えることは嬉しいことなのだろう、と思い、敦賀さんにも話してみた。

そしたら。

そしたら。

敦賀さんから思いがけない言葉が!


「これからも・・・時々兄妹ごっこしようか。」

えっ!?兄妹ごっこ!?

予期せぬ一言に、敦賀さんの顔を見上げて何も話せずにいたら、敦賀さんが提案してくれた。

「前々から考えていたんだけどね。今回の兄妹設定で調子に乗って服や靴やカバン、小物類を買い過ぎた気がしていたんだ。雪花役の最上さんにも、カイン兄さんはあれこれ買い物し過ぎだと常々怒られていたよね。雪花の服だけでも数十着。全部終わった後には最上さんに引き取ってもらうつもりだったけど、もしかしたら今の下宿先には全部入りきらないんじゃないかって。それに普段の最上さんの服装とは雰囲気違うデザインだから、着るのを躊躇するだろうなあって考えていたんだ。幸い俺のマンションのクローゼットはかなりスペース的に余裕あるし、普段着なさそうな服はそこに置いて、たまに兄妹ごっこ出来ればいいんじゃないか、とね。」

そういえば、そうだった・・・あの山ほどの服とか靴とか、返品不可能だった・・・持って帰るにしても、雪花のあんな際どい衣装、だるまの大将やおかみさんに見られたら何て言われるか!?この茶髪だって初めて染めた時には大将にすごい顔で睨まれちゃったしなあ。

「衣装、、、結果的に敦賀さんに沢山買わせてしまって本当に申し訳ないです。
でも、どう考えても下宿先の方々にあの服装を見せるわけにはいかないので、差支えなければ全部置かせていただきたいです。いや、要らないという訳ではないのですが。本当に申し訳ありま・・・」

敦賀さんにはあまりにも申し訳ないのでテーブルに頭がつくくらい頭を下げて謝ろうとしたが、手前のところで敦賀さんの大きな手に遮られ、顔を持ち上げられてしまった。

「くすくす・・・気にすることないからね。
カインは妹がとっても大事で唯一の存在だったから、何でもあげたくなっちゃうんだよ。
兄妹での買い物なんて初体験は、妹役の最上さんがいてくれたからこそ楽しく出来たのだし、衣装代は今回のギャラを考えれば全然気にならない金額だからね。もっと買ってもいいくらいだったよ。最上さんは映画には出演しなかったけど俺の云わば付き人としてずっと一緒に演技してくれていたのだし、ギャラの代わりとでも思ってくれればいいから。逆にギャラが出ないのが申し訳ないくらいなんだ。」

そう言ってもらえて少し心が軽くなった。
そうよね、高校生の、しかもラブミー部所属の私なんかと違って、敦賀さんのギャラって、今回は極秘プロジェクトだけあって半端じゃない桁なんだろうなあ。その敦賀さんと撮影期間ずっと頑張ってきたから、この衣装はきっとボーナスね!最初は露出が激しいから恥ずかしさもあったけど、雪花・ヒールとしての生活を通じて、とても思い入れのある服になったし。

「ありがとうございます。」


「じゃあ、決まり。雪花役としてマンションに来る時に困るだろうから2,3着は持って帰ること。思い入れのある服を持っていってね。残りは全部俺のマンションに送って保管しておくから。最上さんは俺とオフが合った時にいつでもマンションに来て雪花として生活できる。はい、スペアキー。渡しておくからいつでも来ていいよ。ああ、カインが居なくても、いつでも入って雪花として生活してくれても構わないから。」

「いいんですか?」

スペアキーを出されてびっくりしたけど。
でも、でも。
焦る気持ちでなく、何か心の中が温かいものでいっぱいになった。

くすっ・・・

「どうしたの?」

思わず笑ってしまった私に、おや?と敦賀さんが不思議そうな表情をしていたので説明した。

「すみません、何だか、帰る家が出来た気がして。雨の中歩いていた時には、これでヒール兄妹が消えてしまうのだと思うととても寂しくて辛かったのですけど、今はとても幸せで。私、小さい頃から旅館に預けられて育ったから『帰る家がある』って感覚を知らなかったんです。で、こういうことなのかな、って嬉しくなりました。私はとっても幸せ者ですね。あのハリウッド俳優のクーヒズリ先生を父さんと呼べて、日本の芸能界ナンバーワンの敦賀さんを兄さんと呼べるだなんて。」

最後の朝食は、少食の敦賀さん向けに考えた軽いメニューだったけど、心が満ち足りたお陰で二人ともあまり食べずに満腹感を得て済ませた。



フロントで宅急便用の段ボールを数個入手し、寝室で歌を口ずさみながら荷造りしている最上さんを眺め、その様子に満足しつつ食後のコーヒーを口に含む。

これでいい。今は。
少なくとも「尊敬する先輩」なんて訳わからない遠い存在でなくて身近な「兄」という存在を手に入れることが出来た。
あのキスは寝ぼけてやったことだと思わせたが、あの時ずっと手を唇にやっていた。無意識だとは思うが以前よりは着実に最上さんの心に接近出来ている気がする。そうだよな、キス未経験の女の子にあの濃厚なキスは・・・経験豊かな俺でさえ、あの唇には強烈な甘さを感じたのだから・・・。つい夢中になって貪って・・・キスだけでまさか出してしまうとは。あれで最上さんに少しも打撃を与えられなかったら俺はかなりショックだよ?
俺が心の障害を取り除くのに6年かかったのだし、不破に捨てられて「二度と恋はしない」と誓った彼女の心を溶かすのに、そんな短期間で出来るとは思わない。でも、俺の障害を無自覚なまま取り払って光を与えてくれた君を、今度は逆に俺が自覚をもって照らし光輝く道へと導いていこう。
まずは「兄妹」として第一歩を踏む。
そして、頑なな君の心を春の日差しのように温め溶かし、「恋人」として。
そして「夫婦」として一生を共に歩む。

彼女が荷造りを終えるまでかなり時間があったので、俺はブラックコーヒーをゆっくり飲みながら、決して遠くはない、甘い未来予想図に思いを馳せ、顔を綻ばせていた。






~おわり~






最後まで読んでいただきありがとうございました。
最終話のサブタイトルは、「濡」「寝」の後(After)という意味で「悩」と「晴」を当てはめてみました。
五十音順で ぬ→ね→の(のう)→は(はれ) という単純な理由。  
話としては、「悩む蓮」、「蓮に悩まされるきょこちゃん」→「気持ちがすっきり晴れる」という意味ですが。苦しいかな?
そして文字数13000超・・・。この話を一瞬でも漫画でやろうとしていた私って・・・愚かとしか言いようがない(汗)

 | HOME | 

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

リンク

    【メルヘンの泉HP】
    メルヘンの泉HPへ
    直リンク
    http://meruhennoizumi.web.fc2.com

  • 管理者ページ
このブログをリンクに追加する

FC2カウンター

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。