メルヘンの泉Blog

~近況報告やお返事、ぼやきなどを書きます~

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

濡蓮(寝蓮)制作委員会~最後の一日(1)

濡蓮(寝蓮)制作委員会。続きからどうぞ。

最後の一日(1) ~寝蓮Ⅰ





ふぅっ・・・今夜は寝れないな・・・。

いつものように隣のベッドから微かな寝息が聞こえてくるのを確認してから、かぶっていた布団から頭を出し、幸せそうな顔で寝ている雪花を眺めて俺は溜息をついた。

今日でBJの撮影も無事終了。
最上さんは最後の最後まで妹の雪花になりきってくれて周囲には色んな意味で危ない兄妹だと見られていたようだが、兄妹としての生活はとても充実し心から楽しめた。寝つきの早さは雪花としての設定か、最上さんそのままなのかは不明だが、いつものようにベッドに入って3秒で眠る習慣だ。まあ、起きている間ずっとカインのお守りに神経集中しているから疲れもたまるのだろう。でもカインである俺は、眠ったふりして妹の目を盗んではこっそり酒、タバコを楽しむのが夜の習慣だ。だから早寝する割に起きる時間も遅く、自分でいうのもなんだが、非常にだらしない男だった。こうやって唯一大事にしている妹の寝顔を眺めつつ酒を味わうのが唯一の生き甲斐。・・・という自己設定でもしておかないと、好きな女の子と一つ屋根の下に寝て手をだしてはいけないなんて拷問を、2ヶ月間も辛抱できなかった。よく我慢できたよ、偉いよ、俺。

そうそう、ベッドの下にこっそり隠しておいた大量の酒瓶の処分を考えないと。チェックアウトの前に外に片付けにいかなきゃいけないな。朝になればきっと最上さんに気付かれてしまうから、その前にゴミ箱へ持っていこう。

俺は最上さんに気付かれないよう、そっとベッドカバーの下から2ダース程度はあろう酒瓶を出し、ホテル備え付けの90L入りゴミ袋の中に瓶を入れていった。瓶と瓶が触れて音を立てないよう1本ずつ注意を払いながら。最上さんの寝顔も気にしつつ。

最上さん・・・。
今日まで俺を支えてくれて本当にありがとう。
社長はお守り代わりと言っていたが、何度も闇に飲み込まれそうになった俺を知らず知らず救ってくれた。
最初はミス・ジェリーの用意した際どい衣装に仰天して理性を保てるのか心配で「お守りは要らない」と社長に拒否したこともあったが。そんな俺の気持ちなど気付かないまま君は、街でチンピラとやりあった時も、撮影現場でも、BJなのか闇の中のクオン・ヒズリなのか自分を見失った時、いつも「ヒール兄妹」という、二人だけの温かい世界に呼び戻してくれたんだ。

かつて「敦賀蓮」という名を社長から貰って新たな自分を築くことになっても、俺は一生幸せになる資格はないと思い込んでいた。でも、今回、重い枷の腕時計も外すことができて。君は本当は俺の闇に気付いていたのかい?
君はラブミー部員。人を愛することも愛されることも拒んでいると言うけれど、今まで出会った人を皆、幸せへと導いてくれているんだよ。マリアちゃんも君に出会ってから年齢相応の女の子らしさが出て、しかもお父さんとも仲直りできたし。俺の父もそうだ。君がクオンを演じている姿には驚いたけど、その相手をしている父の表情はかつて俺に接してくれた父そのもので幸せそうで。あれがきっかけで父と俺も和解することが出来た。そういえば昔コーンとして京都の河原で出会ったときに助けてもらったのがきっかけだったっけ。そして今回、BJの闇に引き込まれそうになった時も。

時計はもう外して封印していいのかもしれない。うっかり外してしまった時には何かの予感がしたが・・・それは悪い予兆かと思ったが、今思うとあれが人生の転機だった。人を傷つけた罰として幸せになってはいけない、と枷をはめてきたが、内に籠らず前を向いて歩くことこそが罪滅ぼしなのだと。雪花の兄としてBJを演じることで昇華できたようだ。あの時のことは一生忘れない。そして二度と人を傷つけない。でも、幸せになってはいけないというのは偽善なのだと、君の存在が気付かせてくれた。
自分は単に自分だけの存在ではなく、大事な妹を守ってこそ自分があるのだと。・・・あの時はまだ俺も幼かった。本当に守るべき存在がなく人を傷つけるが解決の道だとどこかで思っていたがために悲惨な結果を招いた。でも今回、大事な妹を、その命だけでなく精神面でも守るために単なる冷徹な殺し屋のBJとは違う、闇の中の光を掴むことが出来た。

過去の様々な出来事が走馬灯のように脳裏に浮かんでは消え、俺の中から冷徹なカインがいなくなり、敦賀蓮に戻った。いや、6年前に止まったクオン・ヒズリとしての時間枠がまた動き出したのを感じていた。


ガタガタッ、という音でふと我に返り外を見ると、今夜も嵐のようだ。
ホテルに戻ってきたあたりから風が強くなっていたが雨もかなり強く横に降っている。
ホテルの窓でさえ音が気になるのだから外はさぞかし・・・
最上さんは目を覚まさないか?

最上さん。
俺の大事な眠り姫。
このままキスしても許してもらえるかい?
メルヘンチックな君のことだから、
「王子様のキスで姫は目を覚まして幸せになるの~!」
なんて王子様をカイン兄さんに置換してくれないか・・・な?

ブラコン・シスコン兄妹設定だったから、撮影現場では日本人には目の毒というくらいイチャついていたが、実の兄妹だから流石にキスはやらなかったもんな。すやすや眠っているし、ここは。最後の最後にこれまで頑張ったご褒美・・・貰っていい?

俺は気配を殺しつつ、そっと最上さんの枕元に近付き、顔まであと10cmのところまで接近した。

いや、待て!

・・・酒瓶を片付けてしまわないと、万が一気付かれたときに言い訳できない!
まずい、チェックアウトする時にこの瓶の山はヤバいだろう?
先に片付けてしまわねば!・・・それからゆっくりと。時間をかけて楽しもう。

そう、楽しみは先にとっておいて。

と、期待を胸にしてそっと酒瓶の入ったビニールを持ち上げホテルの部屋を出た。


ザーーッ・・・


近くのコンビニのゴミ箱にでも捨てればいいだろう、とホテルを出たのだが。
あいにく外は春の嵐だった。
そして、ホテル近くのコンビニは・・・。ゴミ箱が店の中に置いてあるようで、外には見当たらなかった。これでは駄目だ、捨てられない。

そうだ、クランクアップの後タクシーで帰ったのも、雨が降ってたからだっけ。
こんなに強い雨風になっていたんだ。

まあいい。ホテルでビニール傘借りたところでこの風じゃ、骨が折れて使い物にならないだろう。
手には重い瓶があるし、このカインの衣装なら傘差さずに歩いても怪しむ人間はいないだろうし。

と、俺は暴風雨の中をゴミ箱探しに出掛けた。



→Next

 | HOME | 

カレンダー

03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

リンク

    【メルヘンの泉HP】
    メルヘンの泉HPへ
    直リンク
    http://meruhennoizumi.web.fc2.com

  • 管理者ページ
このブログをリンクに追加する

FC2カウンター

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。